妊娠女性へのアセトアミノフェンとADHDの関連性

今回、SNS上で、アセトアミノフェンとADHDの関連性を示すような議論がされておりましたので、個人的にも調べてみることにしました。恥ずかしながら、妊婦さんには、アセトアミノフェンは問題ないと思考停止のような状態になっておりましたので、今回の件で知識をアップデートしていけたらと思います。

≪読んでみた文献≫

FDAでは、妊娠女性への鎮痛薬について、安全性の報告を出しております1)FDA Drug Safety Communication: FDA has reviewed possible risks of pain medicine use during pregnancy【2019/12/10閲覧】。そこでは、NSAIDs、オピオイドと共に、アセトアミノフェンも記載されており、アセトアミノフェンとADHDの関連性について、決定的なエビデンスはないにしろリスクの可能性を示唆し注意を促しております。

母体の遺伝的素因を排除するため、兄弟間での比較により、アセトアミノフェンと神経発達について調査した試験があります2)Ragnhild Eek Brandlistuen.et.al.Prenatal paracetamol exposure and child neurodevelopment: a sibling-controlled cohort study.Int J Epidemiol. 2013 Dec; 42(6): 1702–1713.PMID: 24163279。ここでは、アンケートを出生前2回、出生後1回とり、アセトアミノフェンを28日以上、28日未満で分け調べております。結果としては28日以上のアセトアミノフェンの暴露で有意な結果が出ておりましたが、服用用量の不明、選択バイアスの可能性が懸念事項として挙げられておりました。

 また、妊娠中のアセトアミノフェンの使用とADHDの関係性を調べた試験があり3)Zeyan Liew, MPH.et.al.Acetaminophen Use During Pregnancy, Behavioral Problems, and Hyperkinetic Disorders.JAMA Pediatr. 2014;168(4):313-320.PMID: 24566677、ここでは、妊娠12週目および30週目、生後6か月に電話でアセトアミノフェンの服用を調査し、7歳時点にSDQアンケートを取り、ADHD様症状を評価しております。アセトアミノフェンの使用群で7歳時点のADHD様症状は有意に高いという結果でした(risk ratio = 1.13; 95% CI, 1.01-1.27)。ここでも、期間も示されておりましたが、一貫した結果は出ていない印象でした。また、用量は不明であり、報告バイアスの懸念が考えられます。

同じように、妊娠18週および32週目に、出生後61か月の時点で過去3か月間のアセトアミノフェン使用を報告し、SDQアンケートにより、問題行動を調査した試験があります4)Evie Stergiakouli.et.al.Association of Acetaminophen Use During Pregnancy With Behavioral Problems in Childhood: Evidence Against Confounding.JAMA Pediatr. 2016 Oct 1; 170(10): 964–970.PMID: 27533796。ここでは、家族性の交絡も調整するため、パートナーへもアセトアミノフェンの使用を調査しております。結果としては、行動障害 (risk ratio [RR], 1.42; 95% CI, 1.25-1.62) 、多動性症状 (RR, 1.31; 95% CI, 1.16-1.49)で有意な増加傾向が見られました。アセトアミノフェンの報告はSDQアンケートを取る前であるため、想起バイアスの可能性は低いとしています。

最後に、アセトアミノフェンの暴露を、臍帯血から調べ、ADHDとASDへの影響を調べた試験があります5)Yuelong Ji.et.al.Association of Cord Plasma Biomarkers of In Utero Acetaminophen Exposure With Risk of Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder and Autism Spectrum Disorder in Childhood.JAMA Psychiatry, 1-11 2019 Oct 30.PMID:31664451。結果としては、ADHD:一番アセトアミノフェン(やその代謝物)濃度が高いグループは、2番目のグループの2.26倍、3番目のグループの2.86倍のリスク上昇(odds ratio [OR] for second tertile, 2.26; 95% CI, 1.40-3.69; OR for third tertile, 2.86; 95% CI, 1.77-4.67)、②ASD:それぞれ2.14倍、3.62倍とリスク上昇(OR for second tertile, 2.14; 95% CI, 0.93-5.13; OR for third tertile, 3.62; 95% CI, 1.62-8.60)となっておりました。この文献では全文が読めませんでしたが、抄録より、参加者996人(のうち、最終サンプルには257人の子供(25.8%)がADHDのみ、66(6.6%)がASDのみ、42(4.2 %)ADHDとASDの両方の罹患があったとしています。これは、一般的な罹患率とはかけ離れており、対象者となっている妊娠女性は非常にハイリスクな方たちの可能性があります。

≪感想≫

個人的には、アセトアミノフェンとADHDとの関連性は、現時点では不明確であり、ただ、これらのエビデンスは記憶にとどめておく必要があるかと思います。我慢できない痛みを訴える妊娠女性に使用できる鎮痛剤がないというのはあまりに残酷であり、痛みの我慢に伴うストレスなどの方が、妊娠に悪影響をもたらす懸念もあるかと思います。少なくとも、短期間でのアセトアミノフェン使用とADHDの関連性は示されておらず、屯用の使用でしたら影響は少ない可能性が高いように思います。ただでさえ、不安の多い時期の妊娠女性へ過度な負担を与えないように、薬剤師として何をすべきか、できることは何なのかを考えていく必要があるかと思いました。

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References   [ + ]

1. FDA Drug Safety Communication: FDA has reviewed possible risks of pain medicine use during pregnancy【2019/12/10閲覧】
2. Ragnhild Eek Brandlistuen.et.al.Prenatal paracetamol exposure and child neurodevelopment: a sibling-controlled cohort study.Int J Epidemiol. 2013 Dec; 42(6): 1702–1713.PMID: 24163279
3. Zeyan Liew, MPH.et.al.Acetaminophen Use During Pregnancy, Behavioral Problems, and Hyperkinetic Disorders.JAMA Pediatr. 2014;168(4):313-320.PMID: 24566677
4. Evie Stergiakouli.et.al.Association of Acetaminophen Use During Pregnancy With Behavioral Problems in Childhood: Evidence Against Confounding.JAMA Pediatr. 2016 Oct 1; 170(10): 964–970.PMID: 27533796
5. Yuelong Ji.et.al.Association of Cord Plasma Biomarkers of In Utero Acetaminophen Exposure With Risk of Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder and Autism Spectrum Disorder in Childhood.JAMA Psychiatry, 1-11 2019 Oct 30.PMID:31664451

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