STOPPFrail – 虚弱な成人における高齢者処方のスクリーニングツール

高齢者のための潜在的に不適切な薬物の明示的なリストとして、STOPP/START version 2 criteriaがあります1)STOPP/START criteria for potentially inappropriate prescribing in older people: version 2.Age Ageing. 2015 Mar;44(2):213-8.PMID: 25324330。STOPP/START version 2 criteriaでは、65歳以上の高齢者を対象としたリストになっていますが、より余命の限られた虚弱な高齢者を対象としたSTOPPFrail (Screening Tool of Older Persons Prescriptions in Frail adults with limited life expectancy)という明示的なリストもあります2)STOPPFrail (Screening Tool of Older Persons Prescriptions in Frail adults with limited life expectancy): consensus validation.Age Ageing. 2017 Jul 1;46(4):600-607.PMID: 28119312。ここでは、STOPPFrailについて、少し勉強してみることにしました。

≪STOPPFrail3)STOPPFrail (Screening Tool of Older Persons Prescriptions in Frail adults with limited life expectancy): consensus validation.Age Ageing. 2017 Jul 1;46(4):600-607.PMID: 28119312

・STOPPFrailでは、ターゲット集団を以下の4つの基準全てを満たす患者集団として定義しています。

1:末期で不可逆的な病状
2:1年生存予後不良
3:重度の身体機能障害もしくは認知機能障害
4:病状の進行予防よりも症状の管理が優先されている状態

・Delphiのコンセンサス方法論の使用により、STOPPFrailの明示的リストとして以下の27の基準が提案されています。

Section A:一般

A1:十分な教育、すべての処方薬の適切性において考慮がされていたとしても、持続的な服用ができていない、耐性のない薬
A2:明確な臨床兆候のない薬

Section B:心血管系

B1:脂質低下療法(スタチン、エゼチミブ、陰イオン交換樹脂(レジン)製剤、フィブラート、ニコチン酸誘導体)
これらの薬は有益であるが、長期間投与される必要があり、短期間では、ADEのリスクが利益を上回る可能性がある。
B2:高血圧症のためのα遮断薬
非常に虚弱な高齢者では、厳密な血圧管理は必要なく、 特にα遮断薬は顕著な血管拡張を引き起こす可能性があり、それは起立性低血圧、転倒および怪我を招く可能性がある。

Section C:凝固系

C1:抗血小板薬
一次(二次とは異なる)心血管予防のための抗血小板薬を避ける(有益性のエビデンスがない)。

Section D:中枢神経系

D1:神経遮断抗精神病薬(クエチアピン、オランザピン、リスペリドン、ハロペリドール、クロルプロマジン、ロラゼパムなど)
現在、認知症の周辺症状(BPSD)の臨床的特徴がない場合、12週間以上服用している患者で用量を減らしてこれらの薬を徐々に中止する。
D2:メマンチン
メマンチンが明らかにBPSDを改善していない限り、中等度から重度の認知症の患者では中止し、経過を見る(特に上記の基準を満たす虚弱な患者)。

Section E:消化器系

E1:プロトンポンプ阻害薬
より低い維持量での持続的な消化不良症状がある場合を除いた、1年のうち8週以上使用している最高治療用量でのプロトンポンプ阻害薬。
E2:H2受容体遮断薬
より低い維持量での持続的な消化不良症状がある場合を除いた、1年のうち8週以上使用している最高治療用量でのH2受容体遮断薬。
E3:胃腸鎮痙薬(ブチルスコポラミンなど)
抗コリン性副作用の危険性が高いため、頻繁な疝痛症状の再発がある場合を除いた、胃腸鎮痙薬の定期的な処方。

Section F:呼吸器系

 F1:テオフィリン
この薬は治療指数が狭く、血清レベルのモニタリングを必要とし、コモンな処方薬と相互作用し、ADEのリスクを増大させる。
F2:ロイコトリエン拮抗薬
これらの薬はCOPDにおいて証明された役割を持たず、喘息においてのみ適応されている。

Section G:筋骨格系

G1:カルシウム補給
短期間では利益がない可能性がある。
G2:骨粗鬆症のための骨吸収/骨形成促進薬(ビスホスホネート、テリパラチド、デノスマブなど)
短期間では利益がない可能性がある。
G3:骨粗鬆症のためのSERM
1年以内での利益が達成できない可能性があり、関連するADE、特に静脈血栓塞栓症および脳卒中の短期から中期のリスクの増加がある。
G4:長期間の経口NSAIDs
2ヶ月以上の定期的な服用で、副作用(消化性潰瘍、出血、心不全の悪化など)のリスクが高まる。
G5:長期間の経口ステロイド
2ヶ月以上の定期的な服用で、副作用(消化性潰瘍など)のリスクが高くなる。 慎重な用量漸減と段階的な中止を検討する。

Section H:泌尿生殖器系

H1:5α還元酵素阻害薬
尿道留置カテーテルでの長期的な利点がない。
H2:α遮断薬
尿道留置カテーテルでの長期的な利点がない。
H3:ムスカリン拮抗薬(ソリフェナシンなど)
痛みを伴う過活動膀胱の場合を除いて、尿道留置カテーテルでの長期的な利点がない。

Section I:内分泌系

I1:経口糖尿病薬
単剤療法を目指し、HbA1cの目標値<8%と、厳密な血糖管理は不要。
I2:糖尿病に対するACE阻害薬
糖尿病性腎症の予防と治療のためだけに処方された場合は中止する。 生存予後が不良で高度な虚弱を有する高齢者では明らかな利益はない。
I3:アンジオテンシン受容体拮抗薬
糖尿病性腎症の予防と治療のためだけに処方された場合は中止する。 生存予後が不良で高度な虚弱を有する高齢者では明らかな利益はない。
I4:更年期症状のための全身性エストロゲン
脳卒中や静脈血栓塞栓症のリスクを高める。 症状再発の場合のみ再開を検討し、中止する。

Section J:その他

J1:マルチビタミン配合サプリメント
治療ではなく予防のために処方されている場合は中止する。
J2:栄養サプリメント(ビタミン以外)
治療ではなく予防のために処方されている場合は中止する。
J3:予防的抗生物質
再発性蜂巣炎または尿路感染症を予防するための予防的抗生物質についての確固たるエビデンスはない。

≪STOPPFrailに関する文献≫

長期間の介護を必要としている人では、65%の人がSTOPPFrailの基準を満たし、90%以上の人にリストの薬剤が少なくとも1つ処方されている可能性がありました4)STOPPFrail (Screening Tool of Older Persons’ Prescriptions in Frail adults with a limited life expectancy) criteria: application to a representative population awaiting long-term nursing care.Eur J Clin Pharmacol. 2019 May;75(5):723-731.PMID: 30685856

STOPPFrailを用いた死亡前1年間のコホート研究では、死亡が近くなるにつれ、PIMsが多く処方される傾向があり、死亡4か月前では、20%の人でPIMsが中止になる傾向がみられていました5)Discontinuation of medications at the end of life: A population study in Belgium, based on linked administrative databases.Br J Clin Pharmacol. 2019 Apr;85(4):827-837.PMID: 30667540

介護施設に入所した4年間の生存率とポリファーマシー、PIMsの関連を検討した試験があります6)Associations of potentially inappropriate medication use with four year survival of an inception cohort of nursing home residents.Arch Gerontol Geriatr. 2019 Jan – Feb;80:82-87.PMID: 30390429。ここでは、入所1年後の生存率は79%で、4年生存率は36%となっておりました。入所者のポリファーマシー、PIMsの関連性は高ったですが、生存率との関連性は示されませんでした。

最後の1年のうち、STOPPFrailのリストの中では、脂質低下療法、PPI、カルシウム補給薬、抗精神病薬が、処方されている割合が高いようでした7)STOPPFrail (Screening Tool of Older Persons’ Prescriptions in Frail adults with a limited life expectancy) criteria: application to a representative population awaiting long-term nursing care.Eur J Clin Pharmacol. 2019 May;75(5):723-731.PMID: 306858568)Drug consumption and futile medication prescribing in the last year of life: an observational study.Age Ageing. 2018 Sep 1;47(5):749-753.PMID: 29688246

ゴールドスタンダードのDeprescribingとSTOPPFrailの比較を検討した試験があり、両者のPIMsの同定には、κ統計量で中程度の一致 0.60 (95% confidence interval 0.55-0.65; p < 0.001)が見られたとしています9)Deprescribing in multi-morbid older people with polypharmacy: agreement between STOPPFrail explicit criteria and gold standard deprescribing using 100 standardized clinical cases.Eur J Clin Pharmacol. 2019 Mar;75(3):427-432.PMID: 30421220。また、12人の医師がSTOPPFrailを使用した際の、評価者間での信頼度(IRR)を評価した試験もあり、IRRはκ統計量で平均0.758 (SD0.059)でありました10)Inter-rater reliability of STOPPFrail [Screening Tool of Older Persons Prescriptions in Frail adults with limited life expectancy] criteria amongst 12 physicians.Eur J Clin Pharmacol. 2018 Mar;74(3):331-338.PMID: 29159488

≪感想≫

平均余命の限られた虚弱な高齢者の場合、合併症の予防よりは、QOLの向上がプライマリアウトカムとなることが多いかもしれません。そういった時、STOPPFrailの明示的なリストは、生存率などには影響を示していないかもしれませんが、嚥下困難になっているけど薬はたくさん飲まなきゃいけない、薬を多く飲むことによりQOLへ影響が出ているような方へ、良い影響をもたらすかもしれません。
個人的には、在宅や施設の現場では、比較的親和性が高いツールなのではないかなと思っています。
このような、明示的なリストの使用で、盲目的になってしまうことは避けたいですが、1つの参考文献として臨床のサポート、ポリファーマシーに対して、処方提案などのコミュニケーションに役立つツールになる可能性があるかと思います。

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References   [ + ]

1. STOPP/START criteria for potentially inappropriate prescribing in older people: version 2.Age Ageing. 2015 Mar;44(2):213-8.PMID: 25324330
2, 3. STOPPFrail (Screening Tool of Older Persons Prescriptions in Frail adults with limited life expectancy): consensus validation.Age Ageing. 2017 Jul 1;46(4):600-607.PMID: 28119312
4, 7. STOPPFrail (Screening Tool of Older Persons’ Prescriptions in Frail adults with a limited life expectancy) criteria: application to a representative population awaiting long-term nursing care.Eur J Clin Pharmacol. 2019 May;75(5):723-731.PMID: 30685856
5. Discontinuation of medications at the end of life: A population study in Belgium, based on linked administrative databases.Br J Clin Pharmacol. 2019 Apr;85(4):827-837.PMID: 30667540
6. Associations of potentially inappropriate medication use with four year survival of an inception cohort of nursing home residents.Arch Gerontol Geriatr. 2019 Jan – Feb;80:82-87.PMID: 30390429
8. Drug consumption and futile medication prescribing in the last year of life: an observational study.Age Ageing. 2018 Sep 1;47(5):749-753.PMID: 29688246
9. Deprescribing in multi-morbid older people with polypharmacy: agreement between STOPPFrail explicit criteria and gold standard deprescribing using 100 standardized clinical cases.Eur J Clin Pharmacol. 2019 Mar;75(3):427-432.PMID: 30421220
10. Inter-rater reliability of STOPPFrail [Screening Tool of Older Persons Prescriptions in Frail adults with limited life expectancy] criteria amongst 12 physicians.Eur J Clin Pharmacol. 2018 Mar;74(3):331-338.PMID: 29159488

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